その2へ
“私の絵を見てくださる皆様へ”

私はきっと子供だった。少年には成っていない。
故郷の山に暗い洞穴があった。壁に何日も絵を描いた。
何故なのか誰にも話さなかった。

ある日、私はフランスへ渡った。しばらくして旅へ出た。
サハラの熱砂に酷らされながら、岩の丘がポツンと浮かんでいた。
沢山の洞穴があった。そして古い狩猟の壁画が刻まれてあった。
彼らは生まれながらの天才画家達に違いないと思った。

アブストラートにデフォルメーションされた雄牛や大鹿は猛々しく
勇猛さに溢れ、裸足の狩人は石を振り上げ木の銛(もり)を打ち、
溢れんばかりの命を燃やす。
狩猟のパノラマはうごめいて雄叫びと怒声を聞こえさせながら
倒されて行き死なしめて行く。

太古の狩人が私の心に一本の銛を突き刺したのか。
私はとりつかれその道を進んでしまった。

私も生涯煌びやかな狩りの衣装、金属の剣、弓、槍などを描かないと思う。
あの何万年も前のアーチスト達が私をそしるだろうと思えるから。

私も木の銛だけでいいさ。
ただ二十世紀に生きた小さな絵描きが
もし描いたなら、こんな壁画になった。
それでいい。

科学や文化は沢山の人々がきっと残す。
狩猟紋、お伽話し、地球物語を幻想の夢の中に探り、
洞窟のない今、キャンバスに壁画を生涯描き続けたい。

来るのかも知れないひと吹きの風が、
私の作品の総てを消し飛ばしても、
それはそれで考えない事にしたい。
二十一世紀やそのまた先の子供達が、
こんな動物がいたのかと話をしてくれる日があったら、
こんな嬉しい事はない。

狼の祖先を描こう。鹿や牛の始祖はきっとこんなだったろう。
人間になる前の人間、これでいいかなあ。
さあ、明日もまた幻想の海を泳ぐ。


                       童鬼




壁画 夕陽と化石になった領土分割の諍い 2.8×12m